螺鈿紫檀五弦琵琶 |
「正倉」とは、奈良時代に各寺院・役所が主要な財物と什宝を収納する建物であり、「正倉」のある区域を垣根や築地で囲み「正倉院」と呼んでいた。現存の正倉院は、東大寺の「正倉」だが、固有名詞となったのは、唯一現存する「正倉」だからである。
正倉院は、ロフトをもつ三階建てで、北倉・中倉・南倉の三室に分けられており、中倉が板倉造、北倉と南倉が校倉造である。
正倉院の宝物は、天平勝宝八年(756年)56歳で亡くなった聖武天皇の遺品と薬を妃光明皇后(藤原不比等三女)が東大寺大仏に献納したことに始まり、その後の献納を保管する場所が正倉院(北倉)となり、現在に至っている。
件の五絃琵琶は、インドで開発され、中央アジアを経由して、五世紀後半に中国にその後日本に伝わったものとされる。五絃琵琶では世界で唯一現存するものである。
螺鈿は、奈良時代に唐から輸入された装飾技法であり、夜光貝、白蝶貝、黒蝶貝、青貝、鮑等の貝から光沢を持った表面を、漆地や木地の彫刻された表面にはめ込む手法であり、その貝の発色と輝きが魅力と言える。
紫檀は、その名の通り赤褐色~黒色の縞模様を持ち、木肌は交錯し肌目はやや粗いが、虫や菌に侵されにくく、耐朽性に優れ、美しい仕上がりをもつ銘木である。
この五絃琵琶は、今後10年は公開されないと言われている。10年待てない方には、必見である。