2011年 03月 15日
3.11大震災津波による福島第一原発事故と冷却について |
原発の発電原理は、自転車の電灯と同じで、磁石をまわす力として核分裂の熱エネルギーの蒸気を使い発電するシステムです。
しかし、核分裂で燃料棒の発する水蒸気(2700度)によるタービンの破壊を防ぐために、250度前後を維持するために大量の冷却水を必要とします。ダービンを廻した後の蒸気は復水器で冷やされ、海や川に温排水として破棄する必要があります。(C02自体は排出しませんが、廃熱と排水が多く、効率は30%と悪いのです)
また一年間発電に使った核燃料を10 年以上にわたって冷却し続けなければなりません。つまりすぐに止めたくても使用済燃料は10年以上にわたって冷却し続けなければならず、その間冷却に失敗すると燃料棒が溶けて放射性物質が環境中に放出され、大きな事故になる原因となります。
あまりにも大きな熱エネルギーのために、冷却が不可避であり、冷却の失敗は大事故を意味します。
日本で主力の軽水炉原発は、加圧水型(PWR)と沸騰水型(BWR)ですが、関電の原発(加圧水型:PWR)と違い、東電の沸騰水型(BWR)は、一次冷却水、二次冷却水の区別はなく、原子炉の中で直接お湯を沸かし蒸気を作っています。この蒸気を取り出してタービンを廻し発電します。沸騰水型はタービンの外側まで色々な放射性物質で汚れます。また原子炉から出た蒸気は大きなパイプを通ってそのまま格納容器の外に排出する構造であることから、万一パイプに破断が起きると原子炉からの放射能が直接外気に放出されることになります。
東電の福島原発は、建設当時「日本では、炉心溶解(メルトダウン)は起こらない」として「格納容器からのガス放出弁」を装備しませんでした。スリーマイルとチェルノブイリを経て、92年原子力安全委員会の見解変更に伴い「ガスを格納容器下部からフィルターで外部に排出する(ベント)」改修を行ったという因縁をもっています。
つまり、格納容器の防御機能を自ら放棄し、圧力容器の安全という最後の砦を守る「究極の選択」を、しかも圧力容器の改修を自ら放棄する(原子炉を廃炉にする)「海水の注入」という自殺行為によって、行ったということになります。
また、非常時には「非常用炉心冷却装置(ECCS)が働き大量の水で原子炉を水づけにして冷やす」とされていましたが、津波による電源喪失(充電装置を含む無電源状態)でバックアップ装置が動かず、水素爆発を起こすことで圧力減衰と冷却を実現するという最悪の選択をせざるをえませんでした。
現在、5号炉と6号炉は、運転停止中の4号炉と同様に使用済み核燃料棒を冷却するプールへの冷却機能の低下(十分な電圧を維持できない状態)により、水素爆発による火災が発生する可能性を抱えています。
これは、つまり水素爆発以外にエネルギー放出の手段をもたない状態にあり、自壊以外に解決手段をもたない放射能備蓄機関をもってしまったことを意味する。
【その後の緊急対処によるリカバリー】
1)【冷温停止】5号炉と6号炉は、非常用発電との通電と仮設の海水ポンプの稼働により、冷却プールの冷却機能が回復し、冷温停止(100度以下)状態に入ったと説明された。(3月20日発表)
2)【冷温停止】5号機は、通常電源にて通電、冷却機能を回復、冷温停止(100度以下)状態に入ったと説明された。(3月21日発表)
3)【冷温停止】6号機も 通常電源にて通電、冷却機能を回復、22日午後7時40分、冷温停止(100度以下)状態に入ったと説明された。(3月23日)発表
4)【被爆入院】3号機のタービン建屋地下1階付近で24日午後0時9分ごろ、淡水注入用のケーブル敷設を行っていた作業員3人が被曝(線量は約170~約180ミリ・シーベルト)現場付近は津波による海水や放水で浸水しており、3人はその水につかって作業をしていた。3人のうち、足の皮膚に放射性物質が付いた協力会社の社員2人が、福島県立医大に搬送された。この後放射線医学総合研究所(千葉市)に移送される見通し。(3月24日15時39分 読売新聞)
5)【土壌汚染】福島第一原発から16キロ離れた海水から、安全基準の16.4倍にあたる濃度の放射性物質のヨウ素131が検出され、放水口付近で最大で百倍を超え、海水汚染が広範囲に広がりがあった。(22日東京電力発表)
6)【海水汚染】福島県飯舘村の土1キロからが16万3千ベクレル(放射能の単位)のセシウム137検出されたが、近くの雑草の葉(福島第一原発から北西約40キロ地点から21日昼採取)、約8倍の値にあたる124万ベクレルが検出された。(24日文部科学省発表)
7)【大気汚染】ウィーンの気象地球力学中央研究所は、東日本巨大地震被災直後の3日間(12~14日)に、福島第一原子力発電所から大気中に放出された放射性ヨウ素は、チェルノブイリ原発事故の10日間で放出された量の約2割に相当するという試算結果を公表した。核実験全面禁止条約機構(CTBTO、本部=ウィーン)が、群馬県高崎市など世界各地に置いた監視拠点24か所で検知した放射性物質データをもとに分析した。一方、フランス放射線防護原子力安全研究所は、日本国内の観測データをもとに、12~22日に同原発から放出されたヨウ素やセシウムなどの量は、チェルノブイリ事故の放出量の1割との暫定値を公表している。同研究所の声明によると、試算は米原子力規制委員会や欧州の技術安全ネットワーク、フィンランドの原子力当局とも議論をしたうえで行われた。(2011年3月28日発表読売新聞)
by inmylife-after60
| 2011-03-15 19:26
| 震災・原発・廃炉
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