2011年 04月 19日
リチャード・クー:2012年の米国経済は要注意! |
リチャード・クー:2012年の米国経済は要注意!
〜米国連邦政府債務超過残高の上限改定〜
この間、3.11大震災直後の垂直下降から順調に戻しつつあった日経平均株価は、今週12日から、再下降傾向にあり、本日(19日)前日比で100円前後割り、9500円台を割りました。
これは、S&Pが米国債の格付け見通しを「安定的」から「弱含み」に引き下げたことが要因と言われる。「弱含み」の意味は今後2年以内に3分の1の確率で引き下げるというだけで、格下げは結果的に変更されないかもしれない。
【S&P米国債格付の引き下げ】
19日日経市況解説は、以下の通り昨日18日行われたスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の米国債の格付見通しを折り込み済みと評価している。
「19日午前の東京株式市場で日経平均株価は続落し、前日比142円下げて節目の9500円を約3週間ぶりに割り込んだ。米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が18日、米国債の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に下げ、欧米株が大幅安となった流れを引き継いだ。」(中略)
「S&Pが米国債の格付け見通しを下げたのは、巨額の財政赤字と政府債務の増加が理由だ。対立する民主・共和両党が赤字削減策で合意できない可能性を挙げたが、米財政の悪化はリーマン・ショックの起きた2008年にすでに意識されていた話で、リスク要因として目新しさはない。」
【巨額の財政赤字と政府債務の増加を抱える米国】
これは、米国連邦政府の債務残高が法的な上限を超え、更なる財政悪化が予測されるとの観測を踏まえたS&Pが、米国債の格付け見通しを「安定的」から「弱含み」に引き下げのである。
「弱含み」の意味は今後2年以内に3分の1の確率で引き下げるというだけで、格下げは結果的に変更されない可能性も大きい。
しかし米国は4月8日暫定予算の期限切れになることから、共和党は、この局面を利用して、大幅政府支出の削減を含む財政再建を要求し、これを飲まなければ、上限法案改定には応じないとする戦術に出たのである。
オバマ政権は、妥協策として385億ドル(3兆2千億円)の支出削減に合意することで、危機は市場の予測通り回避された。
【米国の連邦債務残高上限金額】
米国の政府債務残高は5月16日に法定上限の14兆2900億ドルを超えることが予測されている。円換算で1170兆円の債務残高を超える政府債務超過の状態にある。今回予算執行ができなければ、政府機関が閉鎖され、その機能が停止される事態になる。
事実、クリントン政権の時代の1995年11月~96年1月の三ヶ月、政府機関が一部閉鎖された。
【来年の米国経済の見通しは】
野村総研のリチャード・クー氏は、
「注意すべきことは、IMFが米国の財政再建が不十分と言いだしており、ここままいけば、2010年のトロントG20で合意した2013年までに財政赤字を半減するという約束が達成できないとしている点である。」
「思えば、これらの現象は、1997年に日本がIMFの要求を受けて、財政再建に走った時の状況によく似ている。当時の日本は、前年の1996年は、GDP成長率は4.4%とG7のなかで最高となり、景気は上向いていた。しかし、その一方で、1995年からほぼゼロ金利であったにも関わらず、バブル崩壊で、貸借の痛んだ民間は、債務の最小化に走り、住宅を含む不動産価格は下落を続けた。
「ところが、当時の大蔵省やIMFは、財政赤字の大きさだけを取り上げ、財政再建を推し進めたのである。」
「オマバ政権が、財政出動の必要性の説明が十分でなく、中間選挙で大きく勢いをつけた野党共和党がIMFの支持まで取り付けて、財政再建と支出削減を強行すれば、米国が1997年の日本と同じ過ちを犯す可能性はますます高くなる。」
「その意味で足元では堅調でも、来年の米国経済はかなり怪しくなる可能性が高いとみるべきであろう。今の米国の政治状況を考えれば、米国が二番底(double-dip recession)に陥る可能性はまだ残っているのである。」と分析、2012年の米国経済は要注意!と警告している。
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【米国連邦政府債務超過残高の上限改定を巡る駆け引き】
○米財務長官:連邦政府、遅くとも5月16日に債務の法定限度に 4月4日(ブルームバーグ)
ガイトナー米財務長官は4日、議会が行動しなければ、連邦政府は遅くとも5月16日に債務の法定上限に達し、米国民は「非常に厳しい状況」に陥ると警告した。
ガイトナー長官は、来月16日までに法定上限の引き上げがなければ、最大8週間の猶予が与えられる緊急策を財務省は利用すると指摘。ただそうした追加期間は7月8日ごろに終了すると説明した。
同長官は (中略)法定上限引き上げが必要だと強調。米国は金利の急上昇に見舞われるほか、軍や退職者らへの支払い停止ないし延期を余議なくされると警鐘を鳴らした。
長官は「デフォルト(債務不履行)は、やっと脱却し始めた直近の危機よりさらに深刻となり得る新たな金融危機を引き起こす恐れがある」とし、「こうした理由によって、米国のデフォルトは論外だ」と強調した。
○米大統領:予算協議での与野党の溝「狭まる」−下院議長と会談 4月6日(ブルームバーグ)
オバマ米大統領は、ベイナー下院議長とリード民主党上院院内総務との6日夜の会談が、2011会計年度予算をめぐる与野党協議での手詰まり解消にはつながらなかったものの、一部問題で双方の溝が「狭まった」と表明した。
現行の暫定予算は今月8日に失効する予定で、予算協議で合意がなければ、必要不可欠でない政府機関は閉鎖されることになる。
by inmylife-after60
| 2011-04-19 15:20
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