2012年 09月 16日
猶本光(ヤングなでしこ)への杞憂〜9.8三位決定戦観戦記 |

国立競技場でのサッカー試合観戦は、初めてである。国立といえばラグビー観戦ばかりであり、通常は12月第1日曜日の早明戦と1月2日の大学選手権準決勝戦と1月第2日曜日の決勝戦だった。早稲田が勝ち進めばの話しだが、ここ2回程1月2日にお呼びが掛からないシーズンを過ごすこととなった。
秩父宮球技場は、スタンドとピッチとの距離がとても近く、選手同志のぶつかり合う音を聞くことができるが、国立はトラック競技用のコースに阻まれて、選手との一体感を感じることが殆どない。この日も電光掲示板側のメインスタンドの上段であり、左コーナーキックをみるための特別席のようであった。

試合はご存じのように2−1で日本がナイジェリアを倒して見事銅メダルを獲得して、所期の目的を達することができた。観戦した甲斐はあったのだが、自分が期待していた猶本光がどうしたことか殆どゲームメイクに絡んで来なかったことがとても残念でしかたがない。
ここでは何故猶本選手が活躍できなかったのかについて、自分の推測を試みてみたい。
猶本選手への期待はまず準決勝のドイツ戦を闘う前の発言にあった。「日本のこの年代のボールテクニックは世界一、優勝できる」と断言したことである。これは単に闘う前の「はったり」ではなく、彼女の体験的自己認識だと思う。そして試合に完敗した猶本選手は「優勝できなかったことが一番悔しい」と一番泣きじゃくったと言う。そしてこの日、念願のメダルを獲得するもまた泣いていたという。そして理由も「優勝できなかった」ことだという。
私の推測では、「優勝できなかったこと」ではなく、準決勝そして3位決定戦に「自分の存在感を示すことができなかった」からではないかと考えている。それは準決勝敗退時に自分がもっと成長するために完敗したドイツに行きたいとコメントしていたことからも私の見立ては間違っていないと思う。

彼女のポジションは「ボランチ」である。なでしこであれば澤選手と坂口選手に当たる。ボランチは、ブラジルサッカー用語で、ポルトガル語である。名詞は「ハンドル」「舵」を意味するが、動詞は「ぶらぶらふらつき徘徊する」という意味を持つという。具体的には、中盤で最終ライン(バックス)からボールを受けて、最前線(フォワード)にボールを中継するとともに、相手側の攻撃を未然に防ぎ、相手フォワードへ供給されるルートとボールをカットし、反転攻勢するという現代サッカーでは司令塔ともにいうべきポジションである。
従って求められることは
1)相手側パスルートを予測し、ルートを断ち切る位置取り
2)見方側パスルートを確保して、前線中継する位置取り
3)キープした見方ボールの前線へのロングボールのフィード
4)相手側ボランチへのプレスとボールの奪取による局面転換
5)バイタルエリアでのボールキープとキラーバスの提供とシュート
などであり、失点と得点の双方に重要な役割をもつ。ゲームメイクの中心となることは言うまでもない。
しかし、3位決定戦の猶本選手は、殆ど身体が動いていない状態だったと思う。猛暑下の連戦と対ドイツ戦の完敗という心身の疲れがピークに達していたのだと思う。最後迄、守備の面でも攻撃の面でもその存在感をしめすことがなかった。

これは杞憂であってほしいと思ってあえて仮説的に指摘したい。存在感を示せなかった原因の一つは彼女の走力と脆弱な体幹にあるのでないかと思っている。その点では藤田と田中(陽)と柴田が断然腰が低く溜めを効かせた走りをするのだ。なでしこでいえば、その典型はINAC神戸の川澄選手である。彼女の走りがサッカー選手の手本だと思う。
ボランチは、戦局を読み、前戦へのフィードボールを提供できるセンスは不可欠だが、中盤におけるボールキープとボール奪取に不可欠なバネをもった強靱なフィジカルをもっていないとボランチへの信頼感が醸成できないと思う。そのためには体幹の強化と歩幅を狭くしないとダメなのではないかと思う。この日の猶本選手は、つねに相手選手との接点で足だけを相手に寄せるだけのプレスであり、身体がのけぞり、溜めがないので、身体を支えることができずに直ぐに倒れることが多かった。

今年5月なでしこリーグに初デビューした京川舞選手を蘇我フクダ電子アリーナで見た時とまったく同じ印象なのである。センスもスキルもうまさは世代随一なのだろうが、走りに溜めがなく、体幹がひ弱なので、そのうち怪我で欠場するかもしれないと危惧していたのである。それからまもなくして、靱帯切断で全治3ヶ月を余儀なくされ、今回のU-20を棒に振ってしまった。
猶本光選手はこれからの「なでしこ」を担う不可欠な逸材であるが故に、身体的な弱点の克服ためのトレーニングを重視してほしいと思う。このコメントが杞憂に終わることのみを願うばかりである。
by inmylife-after60
| 2012-09-16 06:06
| ラグビー/サッカー観戦記
|
Trackback
|
Comments(0)

