2017年 01月 19日
APA客室設置の書籍〜南京大虐殺は虚構である〜について |
APA客室設置の書籍〜南京大虐殺は虚構である〜について
1月15日より、「APAHOTEL」客室配備書籍に関する投稿が中国のネットサイトで炎上して大きな話題となった。
「APAGROUP」は、17日「ニュースリリース」として、ホームページで反論し、撤去する考えのないことを明らかにした。このままの事態が続けば、1915年「対華21箇条条約」に対する袁世凱政権に激怒した中国人民が、日貨排斥運動をしたように、「APAGROUP」宿泊施設の不買(不泊)運動が進められるかもしれない。
同時にニュースリリースでは、南京大虐殺が「虚構である証拠」を列挙したうえで、「事実に基づく誤り」があれば参考にさせて頂くというコメントを付記し、あたかも「事実の有無」そのものが問われているかのような「虚構」をつくろうとしている。
ここでは、家永教科書裁判の第三次(最終)訴訟に関する南京大虐殺に関する「事実」の経過と最終判決を示すことで、「APAGROUP」ニュースリリースの思い違いを明らかにし、当該書籍の撤去以外に誠意ある対応はありえようもなく、1982年8月宮沢喜一官房長官談話に示された「南京事件は日本陸軍による組織的虐殺の事実」を認め、これに即した対処が求められることは言うまでもない。
APAホテルは宮沢官房長官による「我が国としてアジアの近隣諸国との友好、善隣を進める上で、これらの批判に十分に耳を傾け、政府の責任にておいて是正する」として、「南京事件については、原則として、同事件が混乱の中で発生した旨の記述を求める検定意見を付さないこと」を受け止めることが不可欠である。
そして、宿泊の提供を含む旅行事業は、平和的環境のもとで始めて価値をもち、人種や民族を越えた国際交流に資する事業であることが求められるからである。
「APAGROUP」は「天につばする行為」をやめて、現行客室設置の撤去をはやく意思決定することが賢明である。
1)第三次家永訴訟の経緯について
原告家永側:1980年「新日本史」記述内容
「南京占領後、日本軍は、多数の中国軍民を殺害した。南京大虐殺(アトロシティ)とよばれる。」
被告国(文部大臣)側:「修正意見(注:これを修正しないと出版できない強制力を持つ)
「このままでは、占領直後に軍が組織的に虐殺したというように読み取れるので、このように解釈されぬように表現を改めよ。」具体的には「多数の中国軍民が混乱に巻き込まれて殺害されたといわれる」と記述し、日本軍の行為であるというのが単なる伝聞に過ぎないことを明らかにして、日本軍の行為であるとの評価を避けて、かつそれが「混乱のなか」での出来事であったことを必ず言及せよ。」
家永氏は、この修正意見について、教科書検定官がこれを主張して譲らないので、以下のように変更した。
「日本軍は、中国軍のはげしい抗戦を撃破しつつ、激昂裏に南京を占領し、多数の中国軍民を殺害した。南京大虐殺(アトロシティ)とよばれる。」
この訂正過程への内外からの厳しい批判をうけて、1982年8月、宮沢喜一官房長官は、「我が国としてアジアの近隣諸国との友好、善隣を進める上で、これらの批判に十分に耳を傾け、政府の責任にておいて是正する」として、その方針変更の内容には、「南京事件については、原則として、同事件が混乱の中で発生した旨の記述を求める検定意見を付さない」ことを発表した。
家永氏は、これを受けて記述を以下のように変更した。
「日本軍は、中国軍の激しい抵抗にもかかわらず、ついに南京を占領し、多数の中国軍民を殺害した。南京大虐殺(アトロシティ)とよばれる。」
ところが、この正誤訂正申請を受理することを拒否し、門前払いとしたことから、1984年第三次家永教科書検定訴訟が開始された。
2)第三次訴訟の争点
①「日本軍の組織的な虐殺行為」の有無
②「混乱のなかでの虐殺」という任意の出来事の正否
③「日本軍による虐殺」という主体表示の妥当性
④すでに76年、83年と同一表現での検定合格との整合性
などを争点とするものであった。
3)第三次訴訟の判決(要点)
①一審判決
・検定意見は南京事件そのものを否定したものではないことは明らかである。
・日本軍による組織的虐殺に沿う資料が明らかにされていることから、原告(家永)の本件記述は相当の理由を認める。
・文部省も日本兵によって残虐行為が広く行われていたことを否定するものではなく、76年検定は「その史料では日本軍の組織的行為とのみ断定できないとの判断」によるものであり、必ずしも不当とはいえない。
・76年、83年と同一表現での検定合格との整合性について、原告側の「一貫していない」と受けとられる面のあることは否定できない。
・しかし検定意見による原告側記述もその都度変化しており、必ずしも「一貫していない」との批判とは言えず、違法性はない。
②第三次訴訟の最高裁判決
・1993年10月25日原告上告、1997年8月29日判決、最高裁第三小法廷
・判決(大野正男裁判長)
「検定制度自体は合憲としながらも検定における裁量権の逸脱を7件中4件認め、草莽隊による年貢半減の公約、南京大虐殺、中国戦線における日本軍の残虐行為、旧満州731部隊の記述に関する検定を違法とし、国側に40万円の賠償」を命令した。
by inmylife-after60
| 2017-01-19 19:08
| 歴史認識・歴史学習
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