2017年 12月 16日
安倍「九条改憲」に対案は必要ない |
安倍「九条改憲」に対案は必要ない!〜憲法改正の「作法」〜を読む
(岩波書店「世界」2108年1月号)
筆者は、まず憲法改正に対する「3つの作法」として、①高度の説明責任②情報公開と自由な討議③熟慮の期間をあげる。中心的な作法は「高度の説明責任」である。
すなわち「憲法を変えないことによる「不具合」や「不都合」がより、具体的に説明されなければならない。それだけでなく、憲法を改めることによってしか、その問題を解決できないということも具体的に明らかにされる必要がある」とし、9条への自衛隊明記は現状維持に止まらない「自制政策」の放棄に他ならいという。
ここではその論旨を紹介する。
まず安倍首相による加憲「改憲」はまず「北朝鮮情勢のなかで頑張る自衛隊のみなさんの頑張りへの敬意」と「自衛隊違憲論を一掃する」の2つであることを明らかにして、前者について、自衛隊の権限が現状と何ら変わらないとするならば、自衛隊の明記は、北朝鮮の「脅威」を減じることはないし、もって改憲の理由にはならないとする。
後者がこの論考の中心テーマであり、論考は、違憲論を回避するために、加憲「改憲」案として「9条に自衛隊を明記する」というが、しかし9条2項の「戦力」不保持の規範的制約を受けるため、全く違憲状態は回避できないとする論旨である。
以下論旨を紹介する。
1)9条2項「戦力」不保持との関係について
9条2項の「戦力」不保持規定は、自衛隊が「戦力」に該当しない範囲内に押し止める制約をかけ続けることになる。
自衛隊は米国の軍事力評価機関の2017年軍事ランキングでは、上位から7位であり、軍事力指数(人口・陸海空戦力・資源・国防予算など50項目を総合して軍事力指数を算出している。この指数が0に近いほど軍事力が強いことを意味している)でもランキング6位の英国とほぼ同じ位置(0.2131:1位のアメリカは0.0891)にある。因みに韓国は11位、北朝鮮は23位である。
また自衛隊を9条2項違反とした長沼ナイキ基地訴訟第1審判決(73年9月)でも、自衛隊は「旧陸軍の一個師団当たりの火力は4倍、総合戦力で10倍の威力をもつ」と判示し、今後も違憲判決はなくならない。
2)「核兵器保持は合憲」という政府見解との関係
政府解釈は、「自衛のための必要最小限の範囲に止まれば、核兵器の保有は合憲であるとしている。自衛隊を明記すれば、核保有も可能との憲法上確定する。
2017年7月7日国連で核兵器禁止条約が採択されたが、安倍政権は条約に参加しない態度であり、自衛隊明記は、核武装を禁止する憲法上の根拠が失われる。
3)「集団的自衛権」行使との関係
政府はすでに2014年7月、戦争法案への布石として「集団的自衛権」の行使を容認する閣議決定を行っており、自衛隊明記は、集団的自衛権の行使を含意することで、「専守防衛」まで政府見解を引き戻す憲法上の根拠が失われる。
結語として「憲法を変える側が、「何故変えるのか」の説明に失敗すれば、憲法はそのまま残る。「お試し改憲」や「あら探し改憲」など強引な改憲論説は、憲法改正の「作法」に反する。安倍晋三という憲法違反常習首相」の政権に対しては、浮足立って、対案を提起するのではなく、腰を据えて「ノー」を言い続けることこそが、最大にして最良の「対案」であろう。」
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この論考を読んで感じたことは、以下の点である。
まず、自己欺瞞に満ちた憲法を抱く国民にはなりたくないといこうことに尽きるという思いである。孫達にこのような憲法を理解させる術がないからである。嘘を教えることに等しいからである。
もう一つは、2014年7月これまでの政府見解を覆す集団的自衛権の行使容認を閣議決定したと同様に、憲法に9条自衛隊を明記しなくとも、これまでの政府見解「自衛のための必要最小限の実力」を覆す「閣議決定」をすれば、自衛隊が「国防軍」にしてしまうことが想起できるからである。日本会議の思惑はそこにあるのだという点を決して忘れてはならない。
「自衛隊明記」による9条改憲は、戦後の基本的パラダイムの変更であり、絶対に阻止することが必要である。
by inmylife-after60
| 2017-12-16 14:51
| 政治・外交・反戦
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