韓国最高裁・徴用工判決 「解釈」を変えたのは誰か? |
カレンダー
最新の記事
カテゴリ
全体 京都寺社仏閣 京都歳時記 京都町屋・町並み 奈良・平城京 江戸城・寺社仏閣 江戸歳時記 寺社祭礼 四季の花 読書・学習・資格 ラグビー/サッカー観戦記 協同組合 震災・原発・廃炉 経済危機・投資 政治・外交・反戦 天体撮影 ランニング ボート・ヨット 中国語 歴史認識・歴史学習 中国訪問記 私事・その他 コロナウイルス 以前の記事
2021年 11月 2021年 03月 2021年 02月 2021年 01月 2020年 12月 2020年 11月 2020年 10月 2020年 09月 2020年 08月 2020年 07月 2020年 06月 2020年 05月 2020年 04月 2020年 03月 2020年 02月 2020年 01月 2019年 12月 2019年 10月 2019年 09月 2019年 08月 2019年 07月 2019年 06月 2019年 05月 2019年 04月 2019年 02月 2019年 01月 2018年 12月 2018年 11月 2018年 08月 2018年 04月 2018年 03月 2018年 02月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 04月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 12月 2016年 10月 2016年 04月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 03月 2012年 02月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 07月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 お気に入りブログ
最新のコメント
ライフログ
その他のジャンル
ダイエット日記
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
2019年 01月 20日
岩波書店「世界」1月号「世界の潮」に『韓国徴用工判決「解釈」を変えたのは誰か?』との記事(著者:山本晴太)が掲載された。 この記事は、日本政府の戦後賠償に関する対処経緯とその変遷を取り上げており、日本政府の「国際法上あり得ない判決」(安倍首相)、「両国関係の法的基盤を根本から覆す暴挙」(河野外相)とのコメントを検証する上で有用であり、紹介したい。 経緯①:広島の原爆被爆者、シベリア抑留者訴訟への対処 1951年サンフランシスコ条約及び1956年日ソ共同宣言にて「その国民のすべての請求権を放棄する」との条項に対して、広島の原爆被爆者やシベリア抑留被害者が日本国に対して補償請求訴訟を起こした。その主張は、「日本政府は、損害賠償請求権を消滅させたので、それに代わる補償をすべきである」ということにあった。 日本政府はこれに対して1963年12月東京地裁裁判で「条約によって放棄したのは、外国と交渉する国家の権利(外交保護権)のみであ」り、「国民自身の請求権はこれによって消滅しない」から、日本国は「被害者に補償する責任はない」と主張した。 経緯②:日韓請求権協定締結時対応 1965年日韓請求権協定は、両国と国民の財産、権利、利益及び請求権を「完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認した」と規定したが、締結当初から、上記(経緯①)主旨の解釈を維持していた。朝鮮半島に資産を残す日本人から日本政府への補償を求める訴訟に対処するためである。 経緯③:外務省の基本見解 1991年3月外務省はシベリア抑留で「外交保護権」を放棄した以上、国として何もできないので個人がこれを行使したければ、ソ連の国内法に従って行使するしかない」と答弁し(3月26日参議院内閣委)、91年8月、日本の国内法の手続きに従い、日本で訴訟を提起した韓国人訴訟に対して、この答弁と矛盾する答弁はできず、「いわゆる個人の請求権そのものを国内法的意味で消滅させたということではありません。」と答弁した。(8月27日参議院予算委柳井俊二外務省条約局長)。これが現在まで外務省ホームジページにも掲載される「外務省調査月報」である。 経緯④:解釈の突然変更 政府は2000年頃から戦後賠償裁判で企業と国に不利な判決が出はじめると解釈を変更し、「条約で解決ずみ」と主張し始める。日本人被害者には「加害国の国内手続きにより請求する道が残っているので、日本には補償責任はない」とするが、外国人被害者には、「条約により日本の国内手続きで請求することは、不可能になったので、日本は補償責任がない」と変更した。つまり、「個人の実体的権利は消滅しないが、訴訟によっては行使することができなくなった」という内容に変更されたのである。 (筆者注:2000年頃とあるが、中国人強制連行事件としても著名な花岡事件は2000年11月29日東京高裁で和解が成立した。この「五億円規模の基金設立」の波及効果を恐れて、この解釈変更がされたのだと思う。) 経緯⑤:最高裁判例:日本政府解釈変更を追認 2007年4月27日最高裁は、上記解釈の変更を支持する判決をする。サンフランシスコ平和条約の枠組みとして「民事訴訟上の権利行使はできない」とした。 しかし、判決末尾に以下の原文にある「個別具体的な請求権そのものは消滅していない」ことを認めた。 (筆者注:西松建設中国人強制連行事件:判決原文) 「サンフランシスコ平和条約の枠組みにおいても、個別具体的な請求権について債務者側において任意の自発的な対応をすることは妨げられないところ、本件被害者らの被った精神的・肉体的苦痛が極めて大きかった一方、上告人は前述したような勤務条件で中国人労働者らを強制労働に従事させて相応の利益を受け、更に前記の補償金を取得しているなどの諸般の事情にかんがみると、上告人を含む関係者において、本件被害者らの被害の救済に向けた努力をすることが期待されるところである」。 経緯⑥: 2007年9月地裁判決:最高裁判例を援用。 「サンフランシスコ条約の枠組み」として訴訟による権利行使を不能とする最高裁判決は、日韓請求権協定に対して同じ解釈を適用し、韓国人被害者訴訟も、この最高裁判例を援用し、「個人の請求権が消滅したのではないが請求権協定により訴訟で請求できなくなった」と主張し、地裁がこれを認める判決を出した。(2007年9月19日富山地裁判決) 結語:問題の本質 ①日本政府は国際司法裁判所への提訴を検討するというが、日韓で争う余地があるとすれば、それは「請求権協定によって権利行使ができなくなった」という日本の最高裁と政府の見解の是非である。 日韓両国に裁判を受ける権利を保障することを義務付けられた国際人権規約の下では、「個人の実体的権利は消滅しないが、訴訟によっては行使することができなくなった」とする主張こそ、「国際法上あり得ない判断」である。 ②また企業は、国家政策に従って徴用工を使用したのであり、政府は、本来その和解に積極的に関与すべき立場にある。現在の政権には期待すべくもないが、被害者個人と民間企業の訴訟に介入し、支払いと和解を妨害し、事実を隠蔽したまま、隣国への憎悪を煽ることだけはやめるべきである。 筆者注:上記 西松建設中国人強制連行事件:判決原文にある「更に前記の補償金を取得しているなどの諸般の事情」とは、徴用工を受け入れた企業が、戦後1946年「被害を被った」として受け取った総額5672万円(現在価値600億円相当)の補償金のことを指す。
by inmylife-after60
| 2019-01-20 15:18
| 歴史認識・歴史学習
|
Trackback
|
Comments(0)
|
ファン申請 |
||