2019年 02月 19日
イージス・アショアは必要か |
岩波「世界」3月号に福好昌治による「イージス・アショア」に関する基本的な問題構造を指摘する論評が掲載された。基本的な理解として、有益であり、紹介したい。
1)イージス・アショアと何か
まずイージス・アショアの日本配備に関する知識として、以下の点を理解する必要がある。
①イージス・アショアは、イージス艦の中心的な機能である「レーダー」と「迎撃ミサイル」を艦船ではなく、地上に設置し、防空戦を担う兵器であること
②日本はすでに海上自衛隊所属で6隻保有し、2隻を建造中であり、8隻を保有することになり、これに加えて地上配備をするというものであること、
③在日米軍は、横須賀に7隻のイージス艦を配備しており、現状では、日本周辺に13隻、今後15隻が配備される態勢をもつこと。
④米国ハワイに試験用イージス・アショアを配備、米国以外では、ルーマニアとポーランド(予定)の米海軍基地内のみに配備されていること。
⑤日本に配備されれば、米軍以外の外国軍の基地に始めて配備されるイージス・アショアとなること。
同時に知っておくべきことは、その配備決定に関するプロセスである。通常防衛予算は、各幕僚監部が予算立案し、文官内局と調整し、8月末に防衛省の予算概算要求として提出するというのが、基本プロセスである。しかしイージス・アショアは、2018年度予算概算要求の段階では、「新規アセット(兵器)」として、「イージス・アショアの整備に着手」として記載されたのみであったことである。つまりこれは、幕僚からの提案ではなく、官邸による政治主導で決定されたことを示す。
2)6つの疑問
以上を前提に論考は、6つの疑問点が提起されている。
①価格が非常に高い。
1基1124億円(2基配備)である。しかしこの費用には、教育訓練経費31億円、維持管理費(30年)1954億円が含まれていない。更に当然ながら、運用するために必要な迎撃用ミサイルの取得経費、施設整備費、ランニングコストは含まれていない。この取得経費は、2019年度の陸自予算の約1割に相当し、当然ながら、基本防衛に必要な経費の圧縮が余儀なくされ、トイレットペーパーなど日常経費の節約令が敷かれる構造となる。
②何故秋田と萩なのか
配備候補とされる基地は、秋田市の新屋演習場と萩市のむつみ演習場であり、北朝鮮からのハワイ攻撃のミサイル軌道は、津軽海峡上空であり、またグアムを攻撃する軌道は、中国四国地方を飛翔する。つまり、日本防衛を言うが、ハワイとグアムの防衛に貢献する位置に設定したと言える。
③電磁波は安全か
イージス・アショアレーダーは、飛翔ミサイルの探知のため強力な「電磁波」を放射し、これを「メインビーム」といい、これは宇宙空間に発射されるが、メインビームの周辺に「サイドビーム」と呼ばれる比較的弱い電磁波が発生する。住民説明会でこの問題が指摘されたが、具体的な安全回避距離に関する距離は未だ示すことができておらず、この問題に関する調査態勢などが不備であると指摘する。
④一段ブースターは安全な位置に落下するのか
迎撃用ミサイルはイージス艦から発射した場合、一段目から三段目までのブースター(補助推進装置)と弾道カバー(ノーズゴーン)は海上に落下するが、イージス・アショアでは、一段目は、地上に落下する。説明では、燃焼ガスの噴射ノイズ方向を変更することでコントロール可能とするが、ハワイのイージス・アショアにおける検証が不可欠とする。
⑤何故陸自の保有なのか
イージス・アショアは陸自の予算で取得することから、陸自が運用する。運用部隊は200名とされ、400名の配備を前提とする。しかし、慢性的な人員不足に悩む陸自が、なぜ一から教育する必要があるのか不透明である。運用実績のある海自ではなく、陸自なのかが理解しにくい。
⑥ミサイル防衛に必要なのか
現状のイージス艦の配置、米軍の保有艦との関係はすでに述べた通りである。現状で何故、イージス・アショアを配備する必要があるのかが全く理解できない。
3)何故イージス・アショアを購入するのか
①「見捨てられの恐怖」
すでに北朝鮮がICBMを保有したとすると、アメリカ本土を攻撃するかもしれない。アメリカは、アメリカ本土を犠牲にしてまで。日本を守るのかという恐怖からの配備とする。この恐怖を逃れるには、a)日米同盟の強化b)独自防衛強化の選択となり、手っ取り早いのは、a)であるという判断である。
(これは沖縄に海兵隊を残す発想と通底する)
②対日貿易摩擦の解消
日米FTA交渉上、アメリカからの輸入増対応の必要性からとする。F-35 戦闘機105機を含めて、貿易相殺のための手段からのものであり、軍事的に必要のない買い物である。
以上
by inmylife-after60
| 2019-02-19 11:47
| 政治・外交・反戦
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