2020年 10月 29日
日本学術会議任命拒否に関する論点 |
日本学術会議任命拒否に関する論点
1)現在の状況を法的にどう理解するか〜【日本学術会議法】違法状況にある。
①日本学術会議会員は6名の欠員状況にある。同法7条に違反する状況にある。
②「業績にとらわれない総合的俯瞰的観点」からの任命拒否は第17条に違反する。
③会員の不当行為に関する事実開示のない任命拒否は、第26条に違反する。
以上から、このまま放置すると、同条違反状態が続く。会員を補充する他の法律がない以上、推薦のあった6名を任命しない限り、違法状態が継続する。これ以外の方法について学術会議に要求・指示するすべての行為は違法となる。
2)憲法23条「学問の自由」違反に該当するか〜違憲状況にある。
①憲法は前文で「政府の行為による戦争の惨禍の再来をなくす」ことを明記した。これは「学問の自由」が、政府権力によって犯された戦前の教訓をいかすための規定である。
②自由には大きく二つある。自己選択の自由と権力からの自由である。憲法に謳われる「思想・信教・表現・結社・学問の自由」とは「政権からの自由」を指す。
③自己選択の自由としての軍事研究は、武力による国際紛争の解決手段を放棄する憲法の制約を受けることは自明である。
④憲法は、政府にこれらの自由を保障するための措置を、国民に不断の努力義務を要求しており、日本学術会議法は学術研究の自由を政権から保障する法的措置に他ならない。
この「学問の自由」への侵害を許せば、同様の枠組みにある上記の自由に関わる基本的人権(憲法憲法11条)全般が瓦解の危機に晒される。
3)憲法15条「公務員選定罷免権」による任命拒否は成立するか〜違憲状況にある。
①憲法の国民の義務・権利として記述される憲法15条を以って内閣総理大臣が拒否できるのならば、日本学術会議法の任命規定という個別法を否定することであり、法治国家ではなく、中華人民共和国に等しい人治国家に他ならない。
②この解釈を全ての国家公務員に援用された場合、「全ての公務員は全体の奉仕者であり、一部の奉仕者ではない」とする同15条に違反する。
つまり、公務員は、内閣総理大臣に責任を負うことになり、天皇にのみ責任を負う明治欽定憲法に回帰することに他ならない。
4)学術会議組織の不十分さを理由に任命拒否は適法か〜憲法31条に違反する。
①少なくとも発足以来、学術会議法の「推薦に基づき任命する」との規定及び中曽根首相の「形式的任命」とする国会答弁の解釈変更がなされていない以上、不法行為である。
②法及び国権の最高機関である国会承認手続きを経ずに行政行為を執行することは、「法定の手続きを保障」した憲法31条に違反する。
つまり、個々の学術会員の不当行為に該当しない組織の不十分さを理由に行政執行は成立しない。これは「朕は国家なり」とした絶対王政に等しく、近代以来の法治国家に逆行する。
5)国費投入を理由とする学術会議組織の活動制限は適法か?〜憲法83条に違反する。
①学術会議は、現行同法1条により所轄を内閣総理大臣とし、経費は国庫負担と規定される。学術研究は、権力やその他規制から独立して初めて所期の目的(科学的真理の究明)を達することが可能とする歴史的知見に基づく。
②国費とは、国民の税金に他ならず、政府と行政の恣意的な専権事項ではなく、憲法83条の「財政処理の基本原則により、国会の議決に基づくものでなければならない。」のは自明である。すでに議決された学術会議予算がある以上、制限はあり得ない。
③国費執行権限は、総理大臣と政府ではなく、国会にあることを忘れてはならない。(完)
by inmylife-after60
| 2020-10-29 16:51
| 政治・外交・反戦
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